大学概要

告辞?挨拶等

亚博足彩7年度入学式 告辞(2025年4月7日)

 新入生の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。亚博足彩を代表して皆さんを心から歓迎いたします。
 また、これまで新入生を支えてこられたご家族?関係者の皆さまにも、ご来賓の方々と共に、心からお慶び申し上げます。

 凜とした冬が過ぎ、新しい生命が息吹く春、本学は、合わせて577人の方々をお迎えしました。新入生を含む在学生は、47都道府県、24ヶ国から集まり、ともに学んでいます。新しい仲間をつくり、地域交流、国際交流も楽しみにしてください。

 さて、皆さんはこれから大学生活を営むことになりますが、改めて、大学とはどのようなところでしょうか?そして、大学での学びは高校とどのように異なるのでしょうか?
 答えは一つではなく、皆さんそれぞれに考えていただきたいのですが、私の考えは、「大学は主体的かつ協同的に専門知識を探求することを通じて大人として成熟する場」ということです。このことについて少し掘り下げてみます。

 小学校から大学院に至るまで、学校教育の意義は、「未来を拓くために過去から学ぶ」ことです。その上で、先ほど述べた大学での学びの特徴の一つは、学ぶ内容が高度な専門知識であり、学位の取得がその成果の証しとなることです。皆さんは、AIが単に道具ではなく、行為主体となりうる時代、コンピュータ上に知識が溢れている時代に、一人一人が専門知識を身につける必要があるのだろうか?と疑問に思うかもしれません。
 しかし、知識は蓄えるためにあるのではなく、使うためにあります。不公正、不十分な知識に基づいて誤った判断や行動をすることは、たとえそれが善意の行いであったとしても、社会に悪影響を及ぼしかねないのです。知識を理解し、俯瞰し、活用するためには体系化された知識を身につける必要があります。

 特徴の二つ目は、学び方として“主体的かつ協同的な取り組み”が強調される点です。言葉を換えていうと、“それぞれが独立した目的意識を持ちつつ、より高い次元の成果を目指してチームとして協力して進める取り組み”です。
 人類が繁栄している最大の理由は、信念を共有することで見知らぬ大勢の仲間と協力できることだと言われています。クリック一つで海外の製品が自宅に届けられるのは、貨幣、インターネット、流通などのシステムを世界中の人々が信頼し、合意しているからです。一人一人の能力を引き出すとともに、その総和以上の力を発揮できるのことが人類ネットワークの優れた特徴なのです。

 特徴の三つ目として述べた “大人として成熟する”ことは、少し唐突に思えるかもしれません。しかし、これまでの話で暗に示したように、大学での学びの最終目的は、知識の修得そのものではなく、これからの人生で出会う様々な課題に挑戦し、困難を乗り越えるために、学んだことを活かせる人になることです。
 このことが、第一に皆さん自身の将来を豊かで幸福なものにするのです。その上で、皆さんには、公共のための役割を自ら担おうとする人、助けを必要としている人のために持てる力を使おうとする人、になってほしいのです。人は、かたわらに苦しむ人がいるなかで独り幸福にはなれません。

 想いが先走り、少し堅苦しい話になりました。知識を身につけること、新たな知識を創り出すことは、容易ではありませんが、それ自体、大変面白い、愉しいことです。皆さんには、これから始まる自由溢れる学生生活を、まずは思い切り愉しみ、充実したものにしてください。
 そして、学問を通じて仲間と共に知性を育み、近い将来、人類ネットワークの一員として社会に貢献されることを期待しています。

 結びとなりますが、新入生の皆さんの学生生活が豊かで、実り多きものとなることを祈念して告辞とします。
 本日は、誠におめでとうございます。

 

亚博足彩7年4月7日        
亚博足彩長 榮坂 俊雄 

亚博足彩6年度学位記授与式 告辞(2025年3月21日)

 本日ここに晴れて卒業、修了を迎える皆さん、誠におめでとうございます。
 ただ今、22名の留学生を含め、学部卒業生365名、大学院博士前期課程修了生125名、大学院博士後期課程修了生11名、論文博士1名、合計502名に学位を授与いたしました。
 これまで支えてこられたご家族、教職員一同、ならびにご来賓、ご列席の皆様とともに、皆さんの学位取得を、心からお慶び申し上げます。

 皆さんは工学分野の学びを通して、革新的な世界を創造するための知識?技術を修得されました。工学?科学技術は、地球規模の課題である環境問題、食糧問題、エネルギー問題などの解決に必要不可欠な専門分野であり、これからの活躍を大いに期待しています。

 また、課題解決のための専門知識に加え、卒業研究?特別実験に代表される研究室活動や課外活動、社会活動などを通じて、設定した課題自体の妥当性や導かれた結果の公正性を判断する「良識」、立場の異なる多様な人々と協同して課題に取り組む「主体性と協調性」、そして、人のため、社会のために行動する「倫理観」も涵養されました。自信と誇りを持ち、待ち受ける社会で存分に力を発揮していただきたいと思います。

 一方で、学生という立場であった皆さんは、これまで、ご両親や教職員など、周りの大人によって、知らぬ間に、様々なリスクから守られ、支えられていました。これから自立した大人として更なる発展を望むために、2つの言葉を引用して、はなむけとしたいと思います。

 1つ目は、出典は不明ですが、“Sail away from the safe harbor. Explore. Dream. Discover.”という言葉です。
 皆さんは守られた、安全な港から船で沖に出る準備は整っています。大いに冒険し、夢を追い、まだ見ぬ世界を探し当ててください。その上で、大海原で嵐を乗り切るためにはオールを漕ぎ続けなければなりません。

 そこで2つ目に紹介する言葉は、英国の政治家ウィンストン?チャーチルによる“Success is not final, failure is not fatal, it is the courage to continue that counts.”という言葉です。
 成功で満足せず、失敗を恐れず、そして最も大切なことは継続する勇気です。やり遂げる気概を持って進み続けてください。

 皆さんは本学での様々な活動を通じて「学ぶ」ことの厳しさと同時に楽しさを体験し、学びを通じて自身の成長を実感したことでしょう。この意義深い体験から卒業するのでは無く、むしろ次の段階への始まりとして、これからの長い人生でさらに磨きをかけてください。
 そして不確かな情報に惑わされず、何が正しいのかを問い続け、皆さん自身が頼りになる大人として、次の世代の人々を育んでほしいと願っています。本学もまた皆さんの故郷として学び続け、成長し続けます。

 皆さんの、これからの人生が豊かで実り多きことを願い、私からのお祝いの言葉といたします。
 本日は誠におめでとうございます。

 

亚博足彩7年3月21日        
亚博足彩長 榮坂 俊雄 

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
 また、これまで新入生を支えてこられたご家族ならびに関係者の皆さまにも、壇上のご来賓ご列席の皆さまとともに、お慶び申し上げます。

 流氷を望むオホーツク地域も長く厳しい冬が終わりを告げ、新しい生命が息吹く春に、皆さんをお迎えできることを、教職員一同、大変うれしく思います。本学は、この度、学部443人、編入21人、大学院博士前期課程161人、大学院博士後期課程14人の合わせて639人の方々をお迎えしました。
 新入生を含む在学生は、46都道府県、22ヶ国から集まり、ともに学んでいます。是非、新しい仲間をつくり、地域交流、国際交流も楽しみにしてください。

 さて、世界はロシア?ウクライナ戦争、イスラエル?ガザ戦争、そして環境?食料?エネルギーなど、人類の存亡に関わる深刻な問題を抱えています。このような切迫した時代に、大学で腰を据えて学ぶことに、どのような意味があるのでしょうか?
 本学は、入学した皆さんに何を提供し、皆さんに何を期待するのでしょうか?これらについて、私の考えをお話しして、お祝いの言葉といたします。

 まず、大学で学ぶ意味は何でしょうか?皆さんそれぞれに答えをお持ちだと思いますが、通底する意義は「知性を高めること」であると思います。知性とは、プラトンが「知は最も美しいものの一つである」と言ったように、心豊かに美しく生きるための素養であり、ピアジェが「知性とは方法が判らないときに使うものだ」と言ったように、答えのない問いに立ち向かうための力の源です。
 そして、これまで人類が築き上げた知識体系である【学問】を通じて仲間と共に知性を育み、大人として、良き市民として成熟する場が大学です。

 ところで、学問にはさまざまな分野があります。人間や、その集団である社会の本質を追求する人文?社会科学、自然界の様々な謎や原理を解明する理学、そして、この世の中に存在しない新しい世界を創造する工学などです。本学は、自然と調和する工学を通じて社会に貢献すること、を使命としています。これは単に豊かな自然に囲まれた環境で学ぶ、ということではありません。自然の摂理に従い、持続的に発展する世界を創造することをめざすからです。

 また本学は、亚博足彩4年4月に人文?社会科学を応用した商学を担う小樽商科大学、理学を応用した獣医学?農畜産学を担う帯広畜産大学と経営統合し、同時に、商?農?工の実学三分野を包摂する北海道国立大学機構が設立されました。今後は二大学とも協力し、自然や人間社会に関する知見を導入した工学の教育研究に力を注ぎたいと思います。

 このような特徴を持つ本学での学びが、実り多いものとなるために、我々教職員からの期待として、皆さんには次の三つのことを、心に留めていただきたいと思います。

 一つ目は、工学の専門的な知識と考え方をしっかりと身につけてほしいということです。それは、どのような分野であるにしろ、一つの専門的事柄を深め、突き詰めていくことが知性を高めるために極めて有効だからです。その上で、様々な社会問題解決の鍵の一つが技術革新であり、技術革新は、過去の延長ではないとしても、人類がこれまで培ってきた工学知識体系の中に、新しい発見の手がかりが隠されているからです。

 ただし、専門知識を身につけることは知性を高めるための十分条件ではありません。そこで二つ目は、専門知識を活用して新しい世界を創造しようとするときに、それが本当に社会全体あるいは自然環境にとって望ましく、正しいことなのかを考え、行動する力を養ってほしいということです。そのためには幅広い視野、柔軟な態度、健全な判断、すなわち【良識】が必要です。
 本学および機構では、良識を育むリベラルアーツに関する学びも提供します。ただし、良識は大学で授業を受けただけで身につくわけではありません。友人や社会との自覚的、自律的な係わりや、未知の世界を体験すると同時に自分自身と向き合う読書の習慣を身につけ、愉しんでください。

 そして三つ目は、生涯にわたり学び続けてほしいということです。学部入学生の皆さんには、卒業後、理系ではスタンダードとなっている大学院に是非進学してほしいと思いますが、大学や大学院は学びの終着点ではありません。むしろ“学ぶことについて本格的に学ぶ”スタートラインです。
 “Life is about creating yourself.”という箴言は、アイルランドの劇作家バーナードショーの言葉とされています。前文も含めると「人生は自分探しの旅ではなく、自己形成の旅である」ということです。成長し続ける自己形成の旅に、終わりはありません。大学はやろうと思えば何でもできるところです。そして本学は自分を創造しようとする人を全力で応援します。皆さんには大学生活を全力で楽しんでほしいと思います。

 結びとなりますが、新入生の皆さんの学生生活が豊かで、実り多きものとなることを祈念しています。
 改めて、ご入学、誠におめでとうございます。

 

亚博足彩6年4月5日        
亚博足彩長 榮坂 俊雄